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キャリアパス事例 03

技術を極めた先にあった、経営の道。

小学生のころからものづくりに惹かれ、技術者としての道を歩み続けてきた元家さん。

ところがある時、長年携わってきた事業が撤退をすることに。

それを機に、経営視点の重要さを実感したそうです。ここでは、一人の技術者が経営者になるまでの軌跡を語ります。

パナソニックEWネットワークス株式会社

代表取締役社長

元家淳志

技術者から経営者への転身。誰もが安心快適に 暮らせるITソリューションを提供したい。

1987

原点は、父が持っていた一台のコンピューター。

私がまだ小学1、2年の頃ですが、当時システムエンジニアだった父の部屋にはコンピューターがありました。その頃はまだファミコンもありませんし「パソコン」という言葉も一般的ではない時代です。情報媒体はディスクではなくカセットテープで、そこからデータを読み取り、父とゲームを楽しんだことを覚えています。「デジタルゲームが楽しめるテレビのような箱。中身ってどうなっているのだろう」。そんな疑問が、工学分野に興味を持つ原点になったのだと思います。

1991

1台のウォークマンから、 物づくりの興味が一気に開花。

もう1つ覚えているのは、小学5年の誕生日にウォークマンをプレゼントされたことです。今までは音楽をラジカセで聴いていた毎日が、ウォークマンを手に入れた翌日から外で気軽に楽しめる毎日に変わった。それは、まだ子供だった自分にとってはライフスタイルがガラっと変わるほどの衝撃だったのです。この衝撃を皮切りに、製品1つで人の暮らしや時代さえも変えていく「開発」という仕事がしたいと考えるようになり、中学・高校からは物づくりが学べる理系の大学進学を目指すようになりました。

2000-2003

大学では鉛を使わない蛍光灯ガラスを パナソニックと共同開発。

それから京都工芸繊維大学 物質工学科へと進み、新素材開発をテーマとする研究室に入りました。調度その折、パナソニックとの共同研究プロジェクトが研究室内で進んでおり、私もそこに参加。蛍光灯ガラスを製造する上で不可欠とされる鉛を使わず、環境に優しい蛍光灯を開発しようという取り組みでした。この研究はパナソニックに入社した後も引き続いて取り組むことになり、製品化を実現。中国への市場開拓も視野に入れつつ、現地に大規模な生産工場を設けるという巨大プロジェクトに発展しました。

2008-2009

サークルのノリでできあがった、 世界初のクリア電球型LED照明。

一方、時代はLED照明がようやく世に出始めた頃です。しかしLED照明は一方向にしか光らず、全方位に光る電球に比べ「照明としては扱いにくい」という声が主流でした。そんなある日、チームの仲間たちと冗談話をしているうち「電球そっくりなLED照明ができれば面白いかも」という話になりました。「やってみるか」。まるで学生が研究サークルを立ち上げるような軽いノリで、プロジェクトは始まったのです。それから、LEDを支える基盤の素材を変えてみたり、LEDを蛍光体と蛍光体でサンドする構造を考えたりと試行錯誤。ついに完成に漕ぎつけた際は、「自分たちだけで世界初を創りあげた」という感動で全身が震えました。

2010

経営的視点がなければ、 せっかくの技術がムダになる。

そうした喜びも束の間、私はある事態に大きな衝撃を受けることになります。それは、大学時代から研究に長い歳月を重ね、多くの人たちの協力が結実した蛍光灯ガラスの事業を廃止するというニュースです。当然中国の工場も閉鎖となり、「私たちの努力はいったい何だったんだ」というやり切れなさでいっぱいになりました。しかしこの挫折の中で得たのは、「人や時代の動きをしっかりつかみビジネスへつなぐ経営的視点がなければ、せっかくの技術もムダになってしまう」という気づき。この気づきが、マーケティングや経営学への興味に発展しました。

2018-2021

色メガネを外し、虚心坦懐に人と向き合う大切さを知る。

その後、技術者と事業企画の仕事を兼務する期間を経て、「インドに開設する事業所をマネジメントしないか」という話をいただきました。インドイノベーションセンターは、現地の人たちにソフトウェアを活用した新サービスやソリューションを提供する施設です。日本の常識が通用しない海外で、現地の従業員たちをマネジメントする難しさ、市場のニーズをつかむ難しさ、そして事業を軌道に乗せる難しさ。いくつもの困難の中で、経営には既成概念や心の色メガネを取り外して人と向き合う虚心坦懐の精神が大切なのだと気づきました。この経験が、現在経営者として社員の皆さんと向き合う姿勢につながっています。

2023

構造改革と新規事業立ち上げを 手がけた会社に、社長として就任。

その後帰国し、経営企画部長を経て、パナソニック株式会社の社内分社であるエレクトリックワークス社(EW社)の構造改革に携わりました。その改革とは、物販ビジネスという1本柱の経営体制の改変。お客様とダイレクトに向き合い、脱炭素社会の実現や人手不足等、多様化するさまざまな困りごとを物販のみならず、施工、保守メンテ、アフターサービス含めて解決するソリューション事業を、第2の柱として立ち上げました。そうしたプロジェクトがひと通り完結したタイミングで、「社長として、社員と共に会社の成長を実現して欲しい」という内示をいただき、代表取締役就任へと至りました。

今後の目標

誰もがより安心して、気軽にITのある暮らしを楽しめる世界を生み出したい。

今後の目標は、まずパナソニックEWネットワークス株式会社の経営を軌道に乗せることです。そのためには、お客様を含めたさまざまなステークホルダーに寄り添い、声の一つひとつに耳を傾けることのできる経営者でありたい。ご高齢の方を含む誰もが安心してITなどの先進技術を気軽に利用できるようにしたい。そうして、性別や年齢、国や民族の違いも超えて、誰もがより快適に暮らせる未来を生み出していくこと、創業者の言葉である、”水道哲学”を踏襲し、「情報の水道哲学を実践し、ITの恩恵を世界に広げること」が私と会社の使命だと考えています。

※所属・インタビュー内容は取材当時(2024年2月)のものです。