地球を救うという使命は 続く。
地球温暖化に強い危機感を覚え、その切り札になり得る燃料電池の開発を行うパナソニックに入社した保田さん。
日本を飛び越え、海外での開発も経験してもなお、いまだ道半ばと語る保田さんが、これまでのキャリアとこの先の夢を語ります。
地球温暖化に強い危機感を覚え、その切り札になり得る燃料電池の開発を行うパナソニックに入社した保田さん。
日本を飛び越え、海外での開発も経験してもなお、いまだ道半ばと語る保田さんが、これまでのキャリアとこの先の夢を語ります。
エレクトリックワークス社 電材&くらしエネルギー事業部
環境エネルギービジネスユニット
燃料電池・水素ストラテジックビジネスユニット グローバル事業戦略担当
保田繁樹
高校時代に、授業やテレビ番組を通して、地球温暖化が及ぼす環境破壊や将来のエネルギー枯渇といった情報に触れたことがきっかけで、地球環境問題に興味を持ちました。しかしそのときはまだ、この壮大なテーマに対して自分に何ができるのかという具体的なイメージは持っていませんでした。人生の大きな転換点となったのは、大学時代に燃料電池の研究開発について、友人から偶然話を聞いたこと。世の中にまだ普及していないこの技術が、地球温暖化・エネルギー問題の解決の切り札になる可能性があることを知り、燃料電池分野への就職を志しました。
パナソニックへの入社を決めた理由は、燃料電池を研究開発しているうえに家電のシェアも高く、くらしに身近な製品やサービスから地球環境に貢献できると考えたからです。当時、燃料電池は家庭用への普及が検討されており、それを実現させることで、ユーザーの日常から地球環境を改善していけると感じました。面接でその想いを伝えたこともあり、入社後は燃料電池に関わる部署にいきなり配属。以降、燃料電池一筋のキャリアを歩むこととなりました。
入社して初めに携わったのは、家庭用燃料電池システムの、評価検証・つくり込みです。事業部出身の先輩・上司の方に教わりながら、安全性・品質性能確保に向け、仕様検討と評価検証を繰り返す日々。研究室では問題なく動作しても、実際に使用されるマイナス10度の低温環境や40度以上の高温環境では想定通りに動かないということも日常茶飯事です。設置環境での性能確保に取り組むなかで、「現場現物」に向き合い課題解決する重要性を学びました。無事に製品化したときは喜びを感じた一方で、「ここは初めの一歩でしかない」と、今後の発展への使命感を抱いたことを覚えています。
2010年から約3年半、ドイツ開発拠点の責任者として、欧州向け燃料電池システムの海外パートナーとの共同開発に取り組みました。日本と比べると、仕事の進め方や考え方が異なり、私たちの常識では理解に苦しむような意見を伝えられることも少なくありません。苦労を重ねるうちに得たのは、こちら側でコントロールできることと、できないことに分けて考え、アンコントロールについては割り切るという思考。本当に大切な顧客視点を重要視していれば、方向性がブレることはないと信じ、開発に取り組みました。日本にいた頃は「技術」での関わりがメインでしたが、ドイツでは責任者という「事業」全体を見る立場。この経験が視野を大きく広げてくれましたね。
欧州向け燃料電池システムの開発完了まであと1ヵ月という段階で、製品の騒音値がお客様の要求仕様を満たしていないことが発覚しました。即座に日本側の上司にも連絡を取り、緊急プロジェクトが発足。ところが、どうしても要求仕様を満たせない点があり、お客様が許容できるレベルかどうかを直接確認していただくことになりました。燃料電池の運転音だけが聞こえる部屋で、静かに機器の音に耳を傾ける経営層の方々。しばらくの静寂の後、「これならお客様に受け入れられる。ありがとう」と声をかけられ、無事に最終合意にいたりました。大きなプレッシャーがかかるなか危機を乗り越えたこの経験から、最大限努力することの大切さやリーダーシップの重要性を学ぶことができました。
日本への帰国後は、欧州向け燃料電池システムの次期モデルの製品リーダーを担当しました。開発の全体推進を担い、他部門・海外パートナーと連携し市場導入を実現。ところが、商品化を決定する段階で想定外の課題が発生しました。ギリギリのタイミングでの出来事だったため、上司に開発スケジュールの変更を相談。ところが、「ここまできたら、やるしかない」と、オンタイムで続行の指示がありました。苦戦しながらも課題に真正面から向き合うことで計画通り開発完了。一度はスケジュール変更を提言してしまった自分の、リーダーとしての甘さを実感した出来事です。
燃料電池の原価推進課の課長に就任しました。これまで原価に携わったことはなく、初めて経験する業務。何か問題が発生しても、どんな打ち手を取ればいいかがわからない状態でした。そのため、技術、調達、工場、経理、営業などの関連部門と頻繁にコミュニケーションを取り、その都度学びを得ながら業務を推進しました。原価推進課に配属になったことで、コスト意識はもちろん、経営への意識も発芽。利益率や事業への貢献性を資料にまとめ、経営層へ提案し、フィードバックを受ける。この繰り返しが、視点の広がりにつながりました。
現在は、燃料電池の海外展開業務に取り組んでいます。入社時と比べて業務範囲は大きく広がりましたが、当時抱いた夢である、燃料電池の普及を通じて、CO2削減とエネルギーの安定供給の実現に貢献したいという想いは変わりません。私たちの燃料電池の知名度は年々上がってきていますが、改善点もまだまだ存在します。今以上にお客様に喜ばれる商品・サービスを提供し、地球環境問題の解決に貢献する。そのためにも、グローバルに競争力を有する燃料電池・水素ソリューションをつくりあげることが重要だと考えています。より事業全体を俯瞰し、経営視点で事業拡大に貢献していきたいです。
※所属・インタビュー内容は取材当時(2024年2月)のものです。