ENTRY
インサイドストーリー 06

電材事業のシェアを拡大

日本国内シェア8割を誇るパナソニックのスイッチ・コンセント、ブレーカ、電線管、インターホンなどの電設資材製品。現在では海外にも展開し、アジアを中心に高いシェアを誇っています。ここでは、海外を舞台に電設資材業務を行う2名と、国内で開発に取り組む2名が集まり、日本・海外の違いや海外市場の変化などについて語り合いました。

エレクトリックワークス社

電材&くらしエネルギー事業部 電設資材BU

配線・配管商品技術部 電子技術開発課

高機能商品開発係

2009年入社

齋藤

エレクトリックワークス社

電材&くらしエネルギー事業部

電設資材BU 海外事業推進部

配線市場開発課

2018年入社

山口真生

Panasonic Electric Works India Wiring Device

BU Production Design Department

Assistant Manager

2020年入社

湯澤貴充

エレクトリックワークス社

電材&くらしエネルギー事業部

電設資材BU 配線・配管商品技術部

機構技術開発課 工事用商品開発係

2022年入社

幸穂

創業の原点である電設資材を、 世界に拡げ続ける。

アジア諸国での新築需要の高まり。 新規参入企業と、どう戦うか。

スイッチ・コンセント、ブレーカ、電線管、インターホンなどの電設資材は、人々の暮らしに欠かすことができない。電球に取り付ける小さなアタッチメントプラグの製造を、創業の原点として持つパナソニックは、そんな電設資材分野において国内シェア8割を誇る。機構技術開発課で主にスイッチ・コンセントの開発を担う龍に、商品の特徴を聞いた。

「私たちが生産するスイッチやコンセントは、2種類に分けられます。例えば、スイッチで言うと、誰もが想像する昔ながらのもので、オンオフで電気の点灯と消灯を切り替える、いわゆるメカニカルスイッチと呼ばれるものです。もう1つは高機能スイッチ。スイッチについた操作可能なつまみで調光できたり、スマートフォンで遠隔操作できたりなど、プラスの機能がついているものです。私は、前者のメカニカルスイッチを主に担当しています」

メカニカルスイッチは機能が少なく、製造も一見簡単そうに思える。ところが、シンプルだからこそ、難しい。内蔵された金属をぶつけることでオンとオフを切り替えるが、そこで発生する電流によって金属が溶着してしまう可能性があるため、緻密な設計が求められる。また、メカニカルスイッチは需要が高いため多くの生産量を求められる。技術と生産数、この二つを高いレベルで両立しなければならないのだ。一方で、高機能スイッチに関しても近年急激にラインナップを拡大し続けている。電子技術開発課の齋藤は、その先駆けとなる、初の無線搭載装置の開発に携わった。

「タッチ操作や無線、多数の機器と連携するシステムなど過去事例のない新規機能が多数搭載された挑戦的な製品です。タッチ機能のヒアリングのためにグループ会社のくらしアプライアンス社に協力を仰いだり、居住環境でのテストのためにパナソニックホームズにテスト空間を貸りたりなど、自社の枠を超えて試行錯誤しながら開発したのを覚えています。着手した2012年当時は、IoTがあまり一般的な概念ではなく、他社に先駆けた先進的な事例となったと自負しています」

日本では高いシェアを誇る電設資材であるが、海外では同じ状況とは言えない。インドでの現状のシェアは38%程度で国内1位を誇るが、伸び率が徐々に低迷している。インド拠点で勤務する湯澤はこう語る。

「インドでは新築需要が極端に増加しており、それに伴い電設資材のニーズも増加中。そのニーズを察知した企業の参入が劇的に増えているのです。私はインド拠点で設計を軸に、生産・品質など幅広い管理を担っていますが、いつ均衡が崩れるかわからないこの現状には大きな危機感を抱いています」

この話に大きく頷いたのは、アジア各国のマーケティング施策に取り組む山口だ。担当国の一つであるインドネシアでも新築需要が徐々に高まっており、インドと同じく市場の変化が訪れる気配を感じていると話す。

「先人たちの取り組みもあり、現状は高いシェアを誇っています。販売代理店の棚もほぼパナソニック製品で埋まり、恒常的に製品が売れる状態が長年続いてきました。ところが最近ではインドネシアでも新規参入が増えており、他メーカーの製品を扱う代理店も増加中。この事実を、市場全体の状況や売上の数字を分析している日本のマーケターは危機だと感じているのですが、現地の代理店営業の担当者はそこまで危機感を抱いていません。これまでの成功体験にとらわれず、新たなアプローチをしなければ、今後のブランド存続はない。そんな想いを現地の方にも持っていただけるよう、コミュニケーションを続けています」

パナソニックの始まりとなった電設資材は、国内で多くのシェアを獲得し海外への堅調に展開してきた。ところがいま、その地位が揺らぎ始めている。時代の潮流を理解し、これまでとは違う角度から施策に取り組む必要があるのだ。

インドの「スピード感」は、強みであり弱点。 品質基準との両立を目指す。

湯澤が働くインドの特徴として、設計から製造までのスピード感が挙げられる。日本と比べると納品までのスパンが短く、多くの生産量を確保できる。ところが、このスピード感の裏には、「品質への妥協」という大きな問題があった。その原因は、設計部門に「聖域」があり品質部門の意見が通りづらいことだ。湯澤は赴任してすぐにここを大きく問題視し、変革を始めた。

「製品評価自体はインドでも行われていましたが、設計部門が洗い出した項目を品質部門がただ検査するだけという体勢。これでは、製品化したときに結局問題が発生し、つくり直しになってしまいます。そこでまずは、私が設計した商品において、品質部門との品質目標検討会を通してさまざまな視点から品質項目を抽出しました。取り組みを通して、メンバーにその重要性と有用性を伝え続けるなかで、徐々にメンバーが同様の会議を開催してくれるように。品質は少しずつ向上してきているので、今後はスピード感との両立が課題になってくると考えています」

インドでは平均所得が年々向上しており、「高品質の製品を長く使用したい」といったニーズも生まれてきている。湯澤が日本で学んできた品質観念が、インド市場拡大のキーになるかもしれない。

山口が電設資材のアジア向けマーケティングを担う部署に異動となったのは、2021年のこと。この年は、新型コロナウイルスが世界的に蔓延しており、アジア諸国においても外出自粛を余儀なくされていた。アジア諸国でのコロナ前の営業手法は、営業担当が販売代理店にサンプルを持参し、体験を促すスタイル。外出自粛によりこの手法が取れなくなり、営業活動が充分に行えない状態であった。

「対面の営業ができない今、オンラインで販促をするしかない。そう決意し、慣れないながらもWebサイトや動画を制作。ところが、注目はされるものの売上はそれほど伸びません。認知だけではなく、購買にもつなげるにはどうすればいいのか。日本にはクラブパナソニックという会員サービスがありますが、海外ではサーバーが耐えられない可能性もあり、流用は難しい。そのような状況下で、いまでも現地メンバーとともにトライアンドエラーを繰り返しながら、少しずつノウハウを身につけています」

一方で、圧倒的な認知度を誇り高いシェアを獲得する日本ならではの戦略もあると、齋藤は語る。

「シェア8割を誇る日本において、確かに商品認知は高いですし新商品を出せば自ずと多くの方から注目されます。しかし、この8割という数字を保つことは簡単ではありません。例えば、月に5個しか売れない製品とはいえ、求めている人はいますし、不人気な色だとしても買ってくれる人はいます。どれだけ生産効率が悪くても、必要としてくれるお客様がいる限り製造し続ける。その想いを先人たちから現在まで受け継いできたからこそ、今の結果につながっているのだと思います」

必要な人に高品質な製品を届けたい。活動する国は違うとしても、その想いは共通しているのだ。

誰もが使用している製品を目指す。 その想いは、日本でも海外でも同じ。

アジア諸国において、海外電材の市場が変化しつつあると語った山口は、その変化に対応するためには、自分自身も視野を広げていく必要があると感じている。

「海外電材のさらなる拡大に向け、さらなる知見をつけたいと思っています。例えば、これまでは営業企画という目線で仕事をしてきましたが、ほかの職能の知識も学び、他事業・他グループも巻き込みながら、取り組んでいきたいと考えています」

同じく海外を舞台にパナソニックブランドの拡大を担う湯澤は、この先を見つめながら今やるべきことを分析する。

「私たちは2030年までにインド国内の配線器具シェア50%を目指しています。目標到達のために、まずは設計メンバーへの継続的な技術支援や、インドならではの開発スピードを損なわない新商品品質管理の具現化を図っていきたいです」

また、これまで国内で電設資材開発に関わってきた龍は、自分自身の将来像、そして夢を語った。

「どんな課題でも全員で力を合わせて解決できるような、リーダーシップと人望を持った人財を目指したいです。そしていつか、誰もが一度は触れたことのある商品を生み出せるよう努力を続けていきます」

これまでさまざまな製品の開発に貢献してきた齋藤だが、メンバーのマネジメントに関してはまだまだ成長の余地があると自己評価している。

「開発スキルの面では、ある程度自信がついてきましたが、メンバーへのアプローチの仕方などは、まだまだ改善の余地があると思っています。部下や後輩が行き詰ったときに必ず助けられるような、懐の大きい人財に成長したいです。また、段々と自分が開発に携わった商品が世の中に増えてきました。龍さんの夢とも似ていますが、日本全国、どこの家でも自分が関わった商品が設置されている世界になると、こんなに嬉しいことはないですね」

パナソニックの電設資材をこれからも世界中に拡げ続けるため、情熱と夢を持つ社員たちは歩み続ける。

※所属・インタビュー内容は取材当時(2024年2月)のものです。

関連情報

そのほかのインサイドストーリー